ラベル books の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル books の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

日曜日, 4月 19, 2026

AI時代の本の読み方

スタンフォード大学トップ学生が実践する「AI時代の本の読み方」――NotebookLMにPDFを投げて6つのプロンプトを実行するだけで、本の核心・前提・実世界適用まで一気に抽出する完全ワークフロー



スタンフォード大学の優秀な学生たちは、もう「本を最初から最後までじっくり読む」という古典的な方法を捨てています。代わりに、GoogleのAIノートツール「NotebookLM」に本のPDFをアップロードし、わずか6つのプロンプトを順番に実行するだけで、著者の中心主張、隠れた前提、個人への適用可能性、反論の強度、即時行動プラン、そして長期的に残る知識ノートまでを一気に引き出しているのです。


この方法は、単なる「読書ショートカット」ではありません。従来の読書では1章分に費やしていた時間で、本全体から最大限の価値を抽出する「完全な読書システム」です。AIを活用することで、受動的な消費から能動的な学習へとシフトする、まさに2026年現在の最先端手法といえます。

出典:Jafar Najafov氏(Nextool AI共同創業者)のポスト

実際に試す際は、NotebookLMにPDFをアップロード後、各プロンプトを順番にコピーして実行してください。


1. Core Argument Extractor(核心主張抽出プロンプト)

ほとんどの読者は本を読み終えても、中心主張を2文で説明できません。それは「読んだ」のではなく「ただそこにいた」だけです。本のすべての内容がこの1つの主張に奉仕していることを最初に明確化することで、以後の分析がブレなくなります。


プロンプト(そのままコピーして使用)

「この本全体を読んで、著者が主張している単一の中心的な主張を特定せよ。話題ではなく、著者が『これが真実だ』と読者に納得させようとしている具体的な主張だ。最大2文で述べよ。その後、中心主張を支える3〜5個の主要なサブ主張を特定せよ。各サブ主張について:著者はどんな証拠や論理を使っているか? その証拠の強さは『逸話レベル』から『実証データレベル』まででどれくらいか?」


このステップで「本が本当に言いたかったこと」を言語化。AIの精度が高いため、読み飛ばしや誤解を防げます。


2. Assumption Auditor(暗黙の前提監査プロンプト)

著者は自分の世界観を「事実」として無意識に織り交ぜています。このプロンプトは、それらを暴き出し、洞察か単なるイデオロギーかを判断するフィルターです。優れた本はほとんどの前提が残りますが、過大評価された本はここで崩壊します。


プロンプト

「この著者が明示的に述べず、擁護もしていない重大な前提をすべて特定せよ。著者は人間の本性、組織の動き方、人々が何を欲するか、変化の起こり方について何を当然視しているか? 各未明示の前提について:本書外の証拠で十分に裏付けられているか? 関連分野の信頼できる思想家から異論が出ているか? それとも単に著者の世界観を『普遍的な真理』として押し付けているだけか? もしその前提が間違っていたら、本書の中心主張が最も大きく崩れるのはどれか?」


読書後の信頼性を測る強力なツール。現実の意思決定で誤った前提を採用するリスクを大幅に低減します。


3. Personal Relevance Filter(個人関連性フィルター)

同じ本でも、読む人の状況によって価値は全く異なります。このプロンプトを忘れる人が多いのですが、実行することで「一般的な面白さ」ではなく「自分だけの適用版」を抽出できます。


プロンプト

「ここに私の具体的な文脈がある:[自分の仕事・現在の課題・目標・直面している決定を詳述]。この本全体をその文脈でフィルタリングせよ。今の私の状況に直接適用できる具体的なアイデア・フレームワーク・主張はどれか? 一般的に面白いけど今の私には関係ないものはどれか? 適用可能なものについては、著者の一般例ではなく私の実際の状況で実装したらどうなるかを具体的に描写せよ。」


受動的な読書では「全部面白い」と感じて結局何も行動しません。このフィルターで、即時的な価値を最大化します。


4. Steelman and Steel-man Challenger(鉄鋼化&反論構築プロンプト)

優れた読者は「理解する読み」と「崩す読み」の両方を行います。大半の人は前者だけ。このプロンプトはAIに両方を同時に処理させ、未検証のアイデアを採用するリスクを減らします。


プロンプト

「まず:この本の中心主張を最大限に鉄鋼化(steelman)せよ。著者自身が提示した以上に強くし、著者が引用しなかった最良の証拠も探して強化せよ。次に:この中心主張に対する最強の反論を構築せよ。最も信頼できる反対意見を持つ思想家は誰で、何と言うか? 本の主張に反する実世界の証拠は何か? 両方を終えた後:この本の主張は真剣な精査にどれだけ耐えられるか、あなたの正直な評価を述べよ。」


生き残った主張だけを自分の血肉にできます。意思決定の質が劇的に向上するステップです。


5. Action Extractor(行動抽出プロンプト)

本を読んでも行動が変わらなければ価値はゼロです。著者は原則や例を挙げるだけで、「月曜の朝に何をすればいいか」を具体的に示しません。このプロンプトが橋渡しを強制します。


プロンプト

「この本に基づいて、今後30日以内に即実行可能な最も具体的な変更を5つ生成せよ。『もっと戦略的に』のような曖昧な方向性ではなく、明確なトリガー・明確な行動・実行できたかを測定する明確な方法を伴う行動変更にせよ。次に、その5つを『実施した場合の影響度』対『現在の生活で生じる摩擦の大きさ』でランク付けせよ。明日から始めるべきものはどれか? 開始の具体的な形は?」


「洞察→具体行動」への変換を自動化。読書後の行動変容率を飛躍的に高めます。


6. Permanent Note Builder(永久ノート構築プロンプト)

ニクラス・ルーマンの「90,000枚の相互接続ノート」システムを現代的に再現した最終ステップ。引用ではなく「自分の言葉+接続+証拠+疑問」でノート化することで、知識が複利的に増え続けます。


プロンプト

「この本全体を5つの永久ノートに合成せよ。各ノートは以下の要件を満たすこと:本の1つの核心アイデアを、著者を読んでいない人に説明するような自分の言葉で述べる。そのアイデアを、別の領域で自分が既に知っている少なくとも1つの概念と接続する。そのアイデアを最も強く支える本中の1つの説得力ある証拠を入れる。そのアイデアが提起する、まだどこでも完全に答えられていないオープンな質問で終わる。各ノートは、本を読んだことがない人にも有用な独立した洞察として書く。」


これで「本を消費する」から「本から学ぶ」への決定的なシフトが完了します。2年後もその洞察を保持できる知識資産が手に入ります。


このワークフローの全体像と実践のポイント

1. PDFをNotebookLMにアップロード
2. 6つのプロンプトを順番に実行(1回の作業で完了)


6つの確認ポイント

- 1番目:本が実際に何を主張したか
- 2番目:その主張をどれだけ信用すべきか
- 3番目:自分の状況で何を意味するか
- 4番目:精査に耐えられるか
- 5番目:明日から何をすべきか
- 6番目:2年後もその洞察を持っているか


従来の読書では見落とされがちな「前提の検証」「個人適応」「行動化」「長期定着」をすべてカバー。スタンフォードのトップ層が実践しているという事実は、この手法の有効性を裏付けています。


このシステムを習慣化すれば、読書量を維持しつつ質を劇的に向上させられるはずです。AI時代の本との向き合い方が、根本から変わる一歩になるでしょう。


月曜日, 3月 16, 2026

AIで一冊の本を効率的に作る実践ワークフローを求めて


~ 複数AIの使い分けで、制作時間を半分にしつつ品質を維持する ~

出版業界は厳しい。 ライターのギャラは上がらず、物価だけ上がる。 AIセミナーで「これ一択!」と叫ぶ人もいるが、実際の現場ではまだ「試行錯誤中」。 エージェントに丸投げしても矛盾だらけで、後で全部書き直しになるケースがほとんどだ。

そこで、現実的な生き残り策として提案するのが「人間はチェックに専念、AIはドラフト生成と情報収集を担当」という半自動体制。 これなら制作時間を大幅短縮しつつ、品質を落とさない。


ツールの役割分担──これが一番大事

AIツールにはそれぞれ得意分野がある。1つに頼り切るのではなく、役割を分けて使うのがコツだ。

Grok──最新情報収集の最強ツール

X(旧Twitter)を直接検索できるため、リアルタイムトレンド・最新事例・業界の議論が一番早く拾える。 「このテーマのX最新ポスト10件」のような指示で、ドラフトに「今っぽい」切り口を注入できる。

ChatGPT──文章の肉付け・自然な流れ作り

読みやすく、トーンが安定した本文を書かせるのに向いている。 「流れが悪い部分を自然に直して」と頼むと優秀。Plusユーザー推奨。

Claude──全体構成・台割・一貫性チェックの司令塔

Projects機能で「一冊全体の記憶」を保持できる。 台割作成、章ごとの構成案、内容の整合性チェックに特化させる。 エージェント(Artifacts)は「補助」止まりにしておくのが現時点では無難だ。

なお、Claude Projectsとは、claude.ai上でカスタム指示やナレッジファイル(PDFやテキストなど)を紐づけて「専用の会話空間」を作れる機能だ。一冊分のテーマや台割、既存原稿などを登録しておけば、会話のたびに前提を説明し直す必要がない。後発のClaude Code(ターミナルベースのコーディングエージェント)やClaude Cowork(デスクトップ上のファイル操作・タスク管理ツール)とは用途が異なり、書籍の構成検討や原稿チェックのような「知識と文脈を保持した対話」にはProjectsが依然として最適だ。


具体的な5ステップ作業フロー

ステップ1:構成を先に固める(Claude Projects)

  • Projects内に「この本の全体テーマ」を登録する。

  • 「台割(目次)+各章のポイント(導入・本論・まとめの骨子)」だけを作らせる。

  • 人間は5〜10分で「ここ追加」「ここ削る」だけ修正。

これを最初にやることで、後で方向性がズレるのを防げる。

ステップ2:章ごとのプロンプトテンプレートを作る

毎回同じテンプレートを使うと効率が格段に上がる。一度作れば使い回しが効く。 最低限入れるべき情報は以下のとおり。

  • トーン:中立的で読みやすい、専門的すぎず、一般読者向け

  • 文字数目安:3,000〜4,000字(1章あたり)

  • 構造指定:導入(読者の興味を引く)→ 本論(論理展開)→ まとめ(行動喚起)

  • 参考情報:Grokで拾った最新トレンドを必ず反映

  • 禁止事項:AI臭い表現(「〜でございます」「〜と言えます」)は避ける

ステップ3:章ごとドラフト生成(Claude + Grok連携)

  • Claudeにテンプレートを投げてドラフトを作成する。

  • 同時にGrokに「この章のテーマでX最新ポストを10件拾ってきて」と依頼する。

  • Grokの結果をClaudeのドラフトに手動で反映する(またはChatGPTに「最新情報を自然に織り交ぜて」と依頼)。

ステップ4:エージェントは「補助」として使うだけ

ClaudeのArtifactsで「一章丸ごと生成」は試す価値がある。 ただし「完全自動」は厳禁。途中で矛盾が出たり、トーンがブレやすい。 必ず「半自動」で、人間がすぐにチェックする。

ステップ5:チェック工程をルール化する

ここに人間が集中する。

  • 事実誤認チェック → Grok or Perplexity

  • 文章の流れ・読みやすさ → ChatGPT

  • 全体の一貫性・重複 → Claude Projectsに戻す

  • 最終判断は全部人間(ここだけはAIに任せない)


小さい単位のワークフローとの連携

Typelessで音声入力 → Grokで生対話 → Claudeでまとめ。 これを「1章の種」として使うと、さらに効率が上がる。 長文ブログを何本か作った経験を、そのまま一冊の章にスケールできる。


注意点と限界

  • エージェントに丸投げしても「決定打」はまだ出ていない。みんな試行錯誤中だ。

  • 最初は「1章だけ」でテスト運用する。テンプレートを磨いてから全章に展開。

  • コスト管理:Claude Pro + Grok(X Premium+ or 単体プラン)+ ChatGPT Plus。必要なくなったら即解約するルールにする。

  • 徹夜は絶対禁止。「今日の章はここまで」で区切る。


国内出版業界のAI活用事例

出版業界でのAI活用は、2025〜2026年にかけて急速に進展している。以下、国内の主な実例を整理する。

AI校正・校閲の効率化

DNP(大日本印刷) はAI校正ツールを導入し、印刷物だけでなく契約書や申請書類の審査にも拡大。約7割の負荷削減を目標に掲げている。幻冬舎 はAI editorを活用し、人間の校正前にAIが一次チェックを行うことで、時間短縮と精度向上を両立させている。

いずれも「人手不足」と「制作コスト上昇」への対応策だ。

ストーリー分析・執筆支援

講談社 はジール社の「StoryAI」を基盤に「NOVEL AI」を開発。小説の盛り上がりを数値化し、物語のリズムや緩急を可視化する。メフィストリーダーズクラブの会員向けサービスとして2023年から本格稼働している。

白泉社 は博報堂DYデジタル・PFNと連携し、マンガの線画をAIで自動着色。カラー版配信の効率化に寄与している。

流通・在庫最適化

PubteX は講談社・集英社・小学館+丸紅による2022年設立の共同プロジェクト。AIを活用したサプライチェーン効率化で、在庫最適化・返品削減を実現している。

DNP はRFID×AIで書店在庫をリアルタイム可視化。需要予測と連携し、製造〜物流〜販売のリードタイムを短縮している。

KADOKAWAの組織的取り組み

2024年に発足した出版事業グループAI研究会(89名参加)は、編集者とエンジニアの有志組織だ。生成AIの編集業務への活用とガイドライン策定を並行して進め、クリエイターの創造性を最大化するための「パートナー」としてのAI活用を推進している。

その他の動向

  • 電子書籍プラットフォームでのAIレコメンド強化(80万件規模のレビュー分析)

  • 生成AIによる多言語翻訳で海外展開を低コスト・高速化

  • 一方、生成AIによる「冗長な出版」(同一内容の複数論文)の増加や、剽窃検知ツールの限界も指摘されている


海外出版業界のAI活用事例

海外、特に米国では、Big Five(Penguin Random House、HarperCollins、Simon & Schuster、Hachette、Macmillan)が積極的にAI導入を進める一方、著者側からの抵抗が強いのが日本との大きな違いだ。

大手出版社の動き

Penguin Random House は2024年末から著作権ページに「AIトレーニング禁止」条項を追加。業界初の大規模対応だ。一方で内部では編集・マーケティングの効率化にAIツールを試験導入している。

HarperCollins はMicrosoftとライセンス契約を結び、非フィクションのバックリストの一部をAIモデル訓練に提供(報酬あり)。ただし著者からの反発は強い。

2025年のBISG調査では、米国出版関係者の約48%がAIツールを使用していると報告されている。主な用途は運営業務、データ分析、マーケティング、メタデータ最適化。ただし98%が「倫理的懸念」を抱いている。

AI活用の主な領域

  • コンテンツ生成・編集支援:Springer Nature(ドイツ)が世界初のAI生成研究書を出版。Associated Press(米国)は2014年からAIで金融・スポーツ報道を自動化している。

  • 翻訳・グローバル展開:オランダのVeen Bosch & KeuningがAIで英語圏向け翻訳を加速。2026年にはAIナレーションによるバックリストのオーディオブック化が爆発的に進むと予測されている。

  • パーソナライズド推薦:The New York TimesがAIで記事推薦・パーソナライズドニュースレターを作成。ForbesのBertie/Adelaideツールも注目されている。

著者側の抵抗

2025年6月、Colleen Hoover、Emily Henryら70人以上の著名作家がBig Fiveに公開書簡を送付。「AI生成本の出版禁止」「人間ナレーターの使用義務」「スタッフのAI置き換え禁止」を要求し、署名は1,100人を超えた。

訴訟面では、Anthropic(Claude開発元)が著者・出版社から訴えられ2025年に15億ドルで和解。(米国史上最大級の著作権和解との記載があるが、未確認) NYT vs. OpenAI/Microsoftの訴訟も進行中だ。

市場規模

AI出版市場は2023年の28億ドルから2033年に412億ドルへ成長するとの予測がある(CAGR 30.8%)。(出典不明)


まとめ:これで10年生き残れる

国内外の動向を見ても、「人間+AIのハイブリッド」が現実的な生き残り策であることは明らかだ。

日本は効率化・補助ツール中心で比較的穏やかだが、海外では著者 vs. 出版社・AI企業の対立が激しく、ライセンス契約や禁止条項が標準化しつつある。

コスト耐性をつけ、品質を落とさずに制作時間を短縮する。 これができれば、出版業界が多少沈んでも個人は生き残れる。 有名にならなくても、裏方で現役を続けられる。

大事なのは、ツールに振り回されるのではなく、チェックだけで回る体制を自分の手で作ることだ。

土曜日, 3月 14, 2026

AIが奪う「満足遅延能力」――dax警告をデジタルライターが実践検証。思考の筋肉は本当に萎縮するのか?


発端:daxさんのXポストが突きつけた警告

テック起業家のdax(@thdxr)が2026年3月、Xに投稿したポストが大きな反響を呼んだ。Likesは6,500超、閲覧数88万超。本文はシンプルだ。

「今日チームにこれを送った。すべての素晴らしいものは、できるだけ長く"満足を遅らせる"能力から生まれる。でも、僕らはその能力を集団的に失いつつある気がする」

添付画像には、daxさんが社内チャットに投稿した長文の内部メモのスクリーンショットが含まれていた。LLM(大規模言語モデル=AIコーディングツール)が開発チームにもたらしている3つの悪影響を指摘するものだ。

1. 価値のない機能を簡単にshipしてしまう

プロンプト一つで新機能がポンとできてしまうため、shipのハードルが下がっている。本来は「この機能に本当の価値があるか」を深く考えるべきなのに、勢い余って「これイケるかも」と勘違いしやすい。daxさんは「プロトタイプは製品思考より大事じゃない。なぜ作るのかを深く理解する時間を取れ」と警告している。

2. リファクタリング(コード改善)の意欲が激減

イテレーション(繰り返し修正)の過程で、設計がズレてハック(一時しのぎ)が必要になることはよくある。だが今はLLMがハックをサクッと直してくれるため、「まあいいか」と放置してしまう。daxさんは「元のデザインを直すべきなのに、LLMがハックを吸収するからリファクタ意欲がゼロになる。絶対に闘え。コードは自分が見つけた時より良くして去れ」と訴えている。

3. クリーンアップ(掃除・改善)をサボりがち

LLMが「次! 次!」と新しい機能へ引っ張るため、既存コードの掃除やプロセス改善が後回しになる。daxさんは「掃除に100倍の価値がある。LLMは次へ進ませようとするが、既存を磨くほうが大事だ」と強調する。

核心:速くなったわけではない

daxさんの最も鋭い指摘は、「一番ヤバいのは、これで速くなったわけじゃないということ。普通のペースなのに悪いクセがついている」という点だ。過去6ヶ月で「ほとんどAI使ってなかった」状態から「些細な変更まで全部AI」にシフトした結果、**delay gratification(満足遅延能力)**が蝕まれている、と。

心理学の古典「マシュマロ実験」――子どもがマシュマロを我慢できると将来の成功率が高い――を想起させる指摘だ。偉大な成果は「今すぐ欲しくない。じっくり待つ」から生まれるのに、AIがその筋肉を弱めている。


この問題はエンジニアだけのものか?

ここでひとつ疑問が浮かぶ。daxさんの警告は開発環境の話だが、これはエンジニアだけに限った問題だろうか。デジタル系のライティングや編集の現場でも、同じことが起きるのではないか。

実際、Claude Co-work(Anthropicのデスクトップ向けAIエージェント)やClaude Opus 4.6を使ってリライト作業をしてみると、人間と同等か、場合によってはそれ以上の文章力がある。出力をチェックしてからマージすれば、良い結果が得られることも多い。

問題は以下の2点に集約される。

  1. 必要なテキストが出てきているかどうか
  2. 文脈に沿った結果が得られているかどうか

現時点では、この2点についてはほぼ問題ない――少なくとも、表面的にはそう見える。

科学的な裏付け:表面は完璧でも、長期で何が起きるか

だが、2025〜2026年の研究を掘り下げると、「表面は完璧に見えても、長期でジワジワ質が低下し、自分の思考力が削られる」パターンが多数報告されている。

  • MIT Media Lab研究(2025):AIでエッセイを書くと脳の神経活動が低下し、記憶想起力が弱まる。「個性・創造性ゼロ」の文章が生まれやすくなる。脳の接続が外部サポート量に比例して低下するというデータが出ている。
  • Wharton研究(2025):AIを使うとアイデアが似たようなものばかりになり、グループで使うと多様性が激減する。
  • Harvard Gazette(2025):AIを「松葉杖」のように使い続けると、批判的思考の萎縮(cognitive atrophy)が起きる。

つまり、今は人間のチェックでカバーできていても、6ヶ月後には「AIなしでは深い文脈把握ができない」状態に陥るリスクがある。daxさんの開発チームへの警告と、まったく同じ構造だ。


2つの問題を切り分ける

ここで問題を整理しよう。AIをワークフローに深く組み込むことで生じる課題は、大きく2つに分けられる。

問題① 作業者の能力が落ちること

これは、直接的には仕事の結果とは関係がない。もちろん能力が落ちれば成果物のクオリティも下がっていくから、能力が落ちてもいいわけではない。だが、出てきている成果物のクオリティが下がってこない限りは、仕事としてはひとまず問題ない。

問題② 「苦しみながら深掘りする時間」をスキップしてしまうこと

こちらのほうが根深い。

たとえばプログラムを書くとき、エラーが出たらAIに「直して」と繰り返す。とりあえず動くコードはできるかもしれないが、短い指示を思考停止で繰り返しているだけでは、本質的な理解は深まらない。


対話型ワークフローという選択肢

では、AIを使いつつも思考力を維持する方法はないのか。

私がブログ記事を書くときのワークフローを例に挙げてみよう。最近、かなりハイペースで長文記事を出しているが、その多くはAIとの共同作業で生まれている。具体的には以下の流れだ。

  1. AIとの対話で内容を深める:まずGrokと話をしながら、さまざまな角度から議論を掘り下げていく。
  2. 対話ログをClaudeに読ませてまとめさせる:深掘りした対話ログを別のAIに渡し、ブログ記事としてまとめさせる。
  3. 手作業で編集する:テキストになった後も、読みながら「ここはダメ」「ここはこう書き換えて」「ここを追加して」と指示を重ねる。

ここで重要なのは、短いテキストを与えていきなり長い記事を書いてもらうことは、まずないということだ。AIと対話――つまり議論をする。AIはさまざまなことを知っているから、こちらが問いかけ、AIが答え、それに対してさらに問いかける。一通りの答えが出るまで、これを何度も繰り返す。

この方法は、AIに丸投げして出てきたものをそのままポストするのに比べれば効率は悪い。だが、そこには自分の考え方や、考えていく道筋がAIとの対話の中で出てきている。

研究が裏付ける「対話型」の有効性

このワークフローは、研究で言う「iterative dialogue(反復対話)」+「brain-first hybrid(人間思考先行型)」に該当する。

  • Anthropic論文(2026):AI支援でmastery(理解度)が17%下がる人は「丸投げ+繰り返しデバッグ」タイプ。逆にmasteryを維持・向上させる人は「概念質問・フォローアップ・説明要求」を重ねながら対話するタイプ。
  • Microsoft研究(2025):「iteration & refinement(反復修正)」がcritical thinking(批判的思考)の努力を2倍に増やし、missing context(文脈欠落)を4倍見抜きやすくする。
  • MIT「Your Brain on ChatGPT」(2025):「AI-first(AIに最初から書かせる)」は脳の神経接続を大幅に低下させるが、「brain-first(自分で考え→AIで磨く)」や「iterative dialogue」ではそのダメージが激減する。

つまり、対話を通じて自分の思考の道筋をAIに渡すスタイルは、丸投げとは雲泥の差がある。


それでも残る「2割のリスク」

ただし、対話型ワークフローでもリスクがゼロになるわけではない。残り2割のジワジワくるリスクを整理しておこう。

1. 一人でゼロから深掘りする筋肉が弱まる

AIが即答してくれる快感に慣れると、一人でゼロからアイデアを練り上げる「苦しみの筋肉」が少しずつ萎縮する。Wharton(2025)の研究では、AI対話でもアイデアの多様性が低下する傾向が確認されている。

2. 均質化(ホモジェナイズ)の罠

複数のAIを組み合わせても、長期的には表現パターンが似てくるという指摘がある。読者が「なんかAIっぽいな」と感じるリスクだ。

3. 暗黙知の深掘りがAI依存にシフトする

自分が本来持っているはずの業界特有の暗黙知――それを引き出すプロセスすらAIに委ねるようになると、本来自分ですべき深掘りがAI依存にシフトしていく。


歴史は繰り返す:ネット→スマホ→AI

実は、こうした話はインターネットが出てきた時にもかなり言われていた。

昔は寝る前といえば、雑誌や書籍の文字を読んでいた。それしかやることがなくて、音楽を聴くか本を読んで寝るしかなかった。

ところがネットが登場すると、本を読む代わりにネットを見るようになった。当時はパソコンだったから、さすがに寝床にまでは持ち込めなかったが(昔はノートPCをベッドの上に固定する機材が売られていた時期もある)。

その後、スマホが出てきてからは、みんな本を読まなくなった。私もあまり読まない。難しいものを読もうとはしているが、紙の本はなかなかハードルが高くて読めない。電子書籍は見ているが、文字中心の本であっても、紙の本は買って満足して積読になっている。

何段階にもわたって、思考の筋力や読書の筋力がどんどん減退しているのは事実だ。

Nicholas Carrの予言とAI第3の波

Nicholas Carrの『The Shallows』(2010年)は、ネットが「深い読書」を「浅いスキミング」に変えていく過程を描いた名著だ。

  • 紙の本:持続注意(sustained attention)で脳の海馬・前頭前野が鍛えられ、深い神経接続が形成される。
  • ネット登場:ハイパーリンクとスキミングにより「深さから浅さへ」シフト。デジタル読書では理解力・記憶保持率が30〜40%低下するというデータがある。
  • スマホ時代:ベッドにまで持ち込まれ、通知による注意の散漫化が加速。スマホが視界に入っているだけで創造性が低下するという研究結果もある。

そして今、AIが第3の波として到来している。

  • MIT Media Lab(2025):LLMでエッセイを書くと、脳の接続が大幅に低下し、4ヶ月後には「自分の文章すら思い出せない」状態になる。
  • Gerlich(2025)、666人調査:AI頻用で批判的思考スコアが有意に低下。原因はcognitive offloading(思考の外注)。
  • Harvard Gazette(2025):AIを松葉杖にすると認知萎縮が起きる。

ネット→スマホ→AIと、まったく同じメカニズムの「思考筋力の減退」が繰り返されている。


多少の落ち込みは避けられない。だが、コントロールは可能だ

AIと対話することで思考力を維持しようとしても、多少落ちてしまうのは避けられないだろう。スマホ時代でさえ、「通知をオフにしている」人でも全体として読書筋力は落ちた。AIも同じで、使用量が多いほど微減は避けられない。

ただし、対話型ワークフローは研究で言う「最強の抵抗型」であり、落ち込み幅は丸投げ型の半分以下に抑えられる。そして意識的に対策すれば、維持あるいは微増も可能だ。

実践的な対策

2025〜2026年の研究から導かれるベストプラクティスをまとめておく。

  • 週1回「AI完全オフ日」を設ける:MIT推奨。一人で手書きドラフトを作るだけで脳の接続が回復する。ブログなら、1記事はAIなしでゼロから書いてみる。
  • メタ認知プロンプトを追加する:対話中に「これをAIなしでどう説明する?」「自分の仮説は何だ?」と自分自身に問いかける。
  • 認知負荷を意図的に増やす(desirable difficulties):AIのまとめを受け取った後、AIなしで一旦自分なりの要約を書き、比較する。
  • AIリテラシーの意識化:「AIはパートナーであり、思考の主導権は自分にある」という意識を常に持つ。

結論:AI時代に適応した「新しい筋肉」を鍛える

読書筋力のように「完全に元に戻す」のは難しいかもしれない。だが、「AI時代に適応した新しい筋肉」が生まれる人もいる。AIをgrowth(成長)のためのツールとして使えば、むしろ賢くなれるという研究結果もある。

大切なのは、AIの便利さに溺れて即時満足に流されるのではなく、「満足を遅らせる能力」を意識的に守り続けることだ。daxさんの警告は、エンジニアだけでなく、文章を書くすべての人に向けられている。

思考の筋肉は、使わなければ萎縮する。AIと対話しながら、その筋肉を鍛え続ける方法を、一人ひとりが見つけていく必要がある。

木曜日, 3月 12, 2026

デジタル関係の書籍編集者はもう不要なのか



挑発的なタイトルをつけた。だが、これは煽りではなく、ここ2年ほど自分自身に問い続けていることだ。

私はデジタル関係の書籍やムック(雑誌と書籍の中間的な出版物)の編集者・ライターとして、25年以上この業界で仕事をしてきた。パソコン、インターネット、スマホ、そして生成AI——主に初心者に向けてデジタル関係の実用書を作り続けてきた。デジタル書を作っている出版社とは一通り仕事をしたと言ってもいいだろう。20年間は編集プロダクションに所属し、その後独立してフリーランスになった。

その25年のキャリアの中で、ここ2年の変化は、過去のどの変化よりも大きい。

Windows XPの登場も、インターネットの普及も、スマホの台頭も、それぞれ大きな波だった。直近ではChatGPTが巨大な波だと思えるが、実はスマホの方がずっと大きかった。ただ、それらはいずれも「扱うテーマが変わる」という変化であって、「仕事のやり方そのものが根本から変わる」という類のものではなかった。

今起きていることは違う。編集者の仕事そのものが、足元から揺さぶられている。

何が変わったのか。そして、編集者は本当に不要になるのか。現場で起きていることを、できるだけ正直に書いてみたい。


すでに変わったこと

検索をしなくなった

まず、Google検索をほとんど使わなくなった。

これは誇張ではない。何かを調べるとき、ブラウザの検索窓に打ち込む代わりに、ChatGPTやPerplexityに聞くようになった。

なぜGoogle検索から離れたのか。理由は主に二つある。

一つはSEO対策の弊害だ。検索エンジン最適化が効きすぎた結果、上位に表示されるページの情報価値が相対的に非常に下がっている。本当に知りたい情報ではなく、SEOのテクニックに長けたページばかりが上位を占める。「ゴミばかりがヒットする」という批判はずいぶん前から存在しているが、Googleは効果的な対策を打ち出せていない。

もう一つは広告表示の問題だ。Googleのビジネスモデル上、広告をクリックさせたいという意図があるのはわかる。しかし、オーガニックな検索結果と広告の区別が年々わかりづらくなっている。その結果、意図せず広告をクリックしてしまう人が少なくない数存在しており、もはや検索の邪魔にしかなっていないという状況が生まれている。これはある程度仕方のない側面もあるが、検索ツールとしての信頼を自ら損なっていることに変わりはない。

AIに聞けば、こうした問題を迂回して、複数のソースを横断した上で、こちらの質問意図に合った回答がすぐに返ってくる。正確さの検証は必要だが、それでも出発点としてはるかに効率が良い。

こう言うと「ハルシネーション(AIの事実誤認)が気になる」という反応が返ってくる。「AIだって間違うじゃないか」「見てきたような嘘をつくじゃないか」と。それは確かにその通りだ。完全に正確なことだけを求めるなら、AIは信用できない場面がもちろんある。

しかし、世の中には「8割合っていれば、残りは間違っていても構わない」という場面がいくらでもある。あるいは、9割合っていれば残りの1割はそもそもそこまで真剣に聞いていない、という話も多い。難しい話を噛み砕いて教えてほしい、最新の動向をざっくりまとめてほしい、そういうリクエストに対してAIは十分に応えてくれる。たとえばある製品の価格が少し古くて1割違っていたとしても、その製品が存在すること、それが自分の目的に役に立つことを教えてくれれば、あとは自分で情報源に当たって確認すればいい。もう一度AIに聞き直してもいいし、メーカーのサイトを直接見てもいい。

今までGoogle検索でちまちまと調べていたことが、AIによってまとまった形でポンと提示される。その効率の差は圧倒的だ。ハルシネーションがまだ残っているのは事実だが、だからといってAIを全く使わないという選択肢は、少なくとも実務においてはもうないだろう。

余談だが、Geminiは検索用途にはあまり向いていない。Googleが作ったAIなのだから検索は得意だろうと思いがちだが、実際に使ってみると、検索結果の質はChatGPTやPerplexityに劣ることが多い。これは実務でAIを使い込んでいる人の間ではわりと知られた話だ。もちろんツールの選択は個人の自由だし、Geminiにも別の得意分野はある。ただ、「検索の代替」として使うなら注意が必要だ、という程度のことは言っておきたい。

構成案や台割の作り方が変わった

デジタル関係の書籍を企画するとき、構成案や台割(ページごとの内容配分を決める設計図のようなもの)を作る工程がある。以前は、競合書籍を何冊も引っ張り出してきて、それぞれの目次や章立てを比較しながら、自分の本の骨格を考えていた。机の上に本が積み上がり、付箋だらけになる作業だ。

今はこれを、各AIのDeep Research機能にやらせている。テーマを指定して、そのテーマに関する書籍に掲載したい内容をなるべくたくさん集めさせ、さらにそれを整理して各項目ごとにまとめてもらう。つまり、書籍の目次を作るための下準備や台割の叩き台をAIに作らせるということだ。もちろん最終的な取捨選択と判断は自分でやるが、素材を集めて構造化する工程の効率は比較にならない。

最近ではClaude Coworkを使って、この一連の流れをさらに自動化している。調査から構成案のドラフト作成まで、かなりの部分をAIに任せられるようになった。

改訂版のチェックを任せるようになった

デジタル関係の書籍では、ソフトウェアのバージョンアップやサービスの仕様変更に伴い、改訂版を出すことが多い。これまでは、改訂対象の本を1ページずつ読み返しながら、変更が必要な箇所を手作業で洗い出していた。地味で時間がかかる作業だ。

あるとき試しに、Google AI StudioとChatGPTに既存原稿を読み込ませて、変更すべき箇所を指摘させてみた。完璧ではなかったが、かなりの精度で修正候補を出してくれた。自分で全ページをチェックする場合と比べて、見落としが減り、作業時間も大幅に短縮できた。これもClaude Coworkに移行していくことになるだろう。

イラストレーターに依頼しなくなった

これは同業者にとって、おそらく最もインパクトのある変化だと思う。

デジタル関係の書籍には、操作手順を補足するイラストや概念図が必要だ。以前はイラストレーターに発注していたが、今はほぼすべてAIで生成している。しかも、使用点数は以前より格段に増えた。人間のイラストレーターに依頼していた時代には、コストや納期の制約から点数を絞らざるを得なかったが、AIなら気軽に「ここにもう1点入れよう」と判断できる。

ただし、万能ではない。AIが苦手なタイプのイラストは確実に存在する。

意外かもしれないが、AIはシンプルな絵柄がどちらかというと苦手だ。情報量の多いリアルな描写は得意なのに、線を減らしたシンプルなイラストになると途端にぎこちなくなる。

もっと厄介なのは、人物の「顔だけ」「首から上だけ」のイラストだ。これは私自身がさんざん試して、いまだに使えるレベルのものを安定的に出力できていない。たとえば人物イラストから首から上だけを切り出したい場合、Photoshopでトリミングすればいい話ではあるのだが、最初から「首から上だけ」を出力させようとすると、AIはかなり苦労する。さらに、顔だけのイラストの表情を変える、顔の向きを微調整する(左を向いているものを正面に向かせるなど)といった操作は、現状ほぼ不可能に近い。

これはNano Banana 2を使った場合の話だが、他の画像生成AIでも手軽にできるとは言い難い。本腰を入れて取り組めばできるかもしれないが、実務の時間の中でさっとこなせるレベルではない。こうした場合は、今でも人間のイラストレーターに頼むか、あるいはイラスト自体を使わない判断をすることになる。

その他の細かな変化

文字数の調整もAIに任せるようになった。「この原稿を200字減らして」「もう少し膨らませて300字増やして」といった指示を出せば、文意を保ったまま調整してくれる。完璧ではないが、叩き台としては十分だ。

また、どこにイラストや図版を配置すべきかについてもAIに相談している。「この見開きの中で、視覚的に補足が必要な箇所はどこか」と聞くと、候補を挙げてくれる。これも最終判断は人間がやるが、ゼロから考えるよりはるかに速い。


AIイラストのリアルなコスト感

同業者が気になるであろう、コストの話をしておく。

結論から言えば、イラスト制作費は下がった。それは間違いない。人間のイラストレーターに依頼する場合、1点あたり数千円から場合によっては数万円かかる。AIなら、利用料はほぼ無視できる水準だ。しかも、人間には到底頼めないような量——1冊に数十点、場合によっては百点以上——を入れることも現実的になった。

しかし、見落とされがちなコストがある。時間だ。

イラストレーターに発注した場合、発注後は納品を待つだけでいい。その間、編集者は別の作業を進められる。ところがAIでイラストを生成する場合、プロンプトを考え、入力し、生成結果を確認し、意図と違えばプロンプトを修正して再生成する。この試行錯誤の繰り返しが必要になる。しかも画像生成はテキスト生成と違って待ち時間がかかる。1点につき1分から2分。10点作れば10分から20分。1回で意図通りのものが出ればそれで済むが、そうはいかないのが現実だ。

ここが人間のイラストレーターとの決定的な違いになる。人間のイラストレーターに修正を依頼した場合、ちょっとした直しなら元のイラストを描くよりはるかに短い時間で対応してもらえる。しかしAIの場合、ほんの一部分の修正であっても、最初に生成したのと同じだけの時間がかかる。本来は「この部分だけを修正してくれ」と限定して依頼できればいいし、それが可能な画像生成AIもあるにはある。しかし、たとえばNano Banana ProやNano Banana 2ではそれができない。部分修正を指示しても、実質的には最初から全体を作り直しているように見える。内部的に何をやっているかはわからないが、結果としてかかる時間は新規生成と変わらない。

だから、1点のイラストを仕上げるのに10回やり直すというのは別に珍しい話ではない。こちらの時間と根気が続く限りやり直しを繰り返す。1点に10分以上かかることも普通にある。50点なら単純計算で8時間以上だ。この時間コストは全く馬鹿にならない。

チャットベースのUIでは、基本的に1点ずつしか生成できない。これがボトルネックになる。APIを使って並列処理すれば時間は短縮できるが、それはそれで費用がかかるし、APIを叩くための技術的な知識も要る。

生成後の手直し——Photoshopで微調整するといった作業——はほとんどやらない。やれなくはないが、手直しに時間をかけるくらいなら、プロンプトを変えて再生成した方が早いことが多い。

つまり「得は得だが、状況による」というのが正直なところだ。すでにイラストレーターとの関係があって安く依頼できる人、あるいはそもそもイラスト点数が少ない案件では、無理にAIに切り替えるメリットは薄い。逆に、大量のイラストが必要で、しかも予算が限られている案件では、AIの恩恵は極めて大きい。


これから変わりそうなこと

すでに変わったことに加えて、近い将来変わりそうだと感じていることがいくつかある。ただし、ここからは実用段階に近いものと、まだ実験レベルのものが混在しているので、分けて書く。

実用段階に近いもの

ページごとの文字数調整

デジタル関係の書籍では、見開き単位、あるいはページ単位で設計することが多い。「この見開きに収まるように本文を○○字以内にまとめる」という作業が頻繁に発生する。

最近特に厳しくなっているのが、いわゆる「泣き別れ」の排除だ。テキストが左ページから右ページの冒頭へ数行だけはみ出すレイアウトのことで、これを極端に嫌う編集方針が増えている。書籍なのにそこまで制約を設けるのか、と感じることもあるが、業界全体がビジュアル重視の方向へ進んでいるのは間違いない。

背景には、「読者が頭を使わずに読める」ことを最優先にする方針がある。「頭を使わずに読む」というのが具体的に何を意味するのか、正直なところ解釈に迷う部分もあるのだが、要するに「読者はページをまたいでまで文脈を追ってくれない」という極端な前提で編集するよう求められる場面が増えている。結果として、見開きやページの中に内容を完結させる必要があり、そのための文字数調整が編集者の日常業務になっている。

この文字数調整をAIに任せる流れは、すでに始まりかけている。現状でもかなりの精度で対応できており、あとは実務のワークフローに組み込むだけの段階に近い。

構成案ベースでの原稿執筆

構成案を渡して、AIに原稿の下書きを作らせる。これも現時点でかなり使えるレベルに達している。もちろん、出力されたものをそのまま入稿することはない。必ず人間が読み、事実確認をし、文体を整え、読者にとってわかりやすい表現に直す。しかし、ゼロから書くのと、叩き台を手直しするのでは、かかる時間がまるで違う。

クロスチェック

あるAIが書いた原稿を、別のAIにチェックさせる。たとえばClaudeが書いた原稿をChatGPTに校閲させる、あるいはその逆を行う。同じAIに自分の出力をチェックさせると、同じ間違いを見落とす傾向があるが、異なるモデルを使えばその弱点を補い合える。これは校正・校閲の工程を大きく変える可能性がある。

まだ実験レベルのもの

操作動画からのキャプチャ切り出しとキャプション付与

デジタル関係の書籍制作で最も手間がかかる作業の一つが、ソフトウェアの操作手順をスクリーンショットで記録し、それぞれにキャプション(説明文)をつけることだ。操作を動画で録画しておき、そこから必要なフレームを自動的に切り出して、AIがキャプションをつける——というワークフローは、理屈の上では可能だし、ツールも存在する。しかし、どのツールが最適なのか、実用レベルの精度が出るのか、まだ十分に検証できていない。なお、操作そのものを記録する部分は、現状では人間がやる必要がある。AIはまだ「この操作手順を実際にやってみて」という指示には対応しきれない。

レイアウトラフの自動生成

本のページレイアウトの大まかなラフ案をAIに作らせるという話が出てきている。テキストとイラストの配置、見出しの位置、余白の取り方などを、AIが提案してくれるというものだ。「できる」という話は聞こえてくるが、実際にデジタル関係の書籍の実務で使えるレベルかどうかは未知数だ。この分野の書籍のレイアウトには独特のルールがある。操作手順とスクリーンショットの対応関係、注釈の入れ方、ページをまたぐときの処理など、一般的なレイアウトとは異なる制約が多い。AIがそこまで理解してラフを出せるようになるには、もう少し時間がかかるだろう。


出版社の反応と「責任」の問題

技術的にできることと、実際にやっていいことは別の話だ。

AIが生成したイラストについて、編集部がNGを出すケースがある。理由はさまざまだが、著作権の問題、品質基準、あるいは方針としてAI生成物を使わないという判断をしている編集部は実際に存在する。その場合は、素直に従うしかない。使えないものは使えない。

一方、AIが作成した原稿に対して明確なNGを出している編集部は、少なくとも私の知る範囲ではまだない。ただし「AIを使うなら、自分でちゃんと責任を持て」という条件をつけてくる出版社はある。

これは当たり前の話だ。

自分の名前で——あるいは自分が編集した本として——世に出すものについて、内容に責任を持つのは編集者として当然のことだ。「なぜこの情報を載せたのか」「なぜこういう書き方にしたのか」と出版社側や読者から問われたときに、きちんと説明できなければならない。AIが書いたから自分は知らない、という言い訳は通用しない。AIは道具であって、道具の出力に対する責任は使い手にある。

逆に言えば、この「責任を持てるかどうか」が、AIを使う上での最も重要な判断基準になる。AIの出力をそのまま載せるのではなく、自分の目で確認し、自分の頭で考え、必要なら修正した上で初めて自分の原稿になる。そこを省略した瞬間に、編集者としての存在意義を自ら放棄することになる。


では、編集者は何をする人になるのか

ここまで読んで、同業者の多くはこう思っただろう。「で、自分たちは何をすればいいんだ」と。

現時点で、AIに完全には置き換えられていないと感じるのは、大きく二つある。

一つは企画の判断だ。この本を作るかどうか、このテーマで勝負するかどうか、今このタイミングで出す意味があるかどうか。これは経営的な判断であり、市場の感覚や出版社との関係性、読者層の肌感覚が問われる。

もう一つは情報の取捨選択だ。AIは大量の選択肢を提示してくれるし、ネット上の意見を整理してまとめてくれる。しかし、その中から何を選び、何を捨てるかの判断には、まだ人間の感覚が入った方が良い結果になることが多い。読者が本当に必要としている情報は何か、何を省略しても問題ないか。その嗅覚は、長年の経験で培われるものだ。

ただ、正直に言えば、この二つの領域もいずれAIに侵食されると思っている。

企画判断は経営の問題だが、経営そのものをAIが担う時代がくるという話はすでに出てきている。情報の取捨選択についても、AIの判断力は着実に向上している。「できるかできないか」で言えば、どちらも遠くない将来にAIが対応できるようになるだろう。

しかし、「できる」と「やるべき」は別の話だ。

たとえ技術的にAIが企画判断をできるようになったとしても、あえてそこに人間の判断を入れようとする人は残るだろう。そして、その方がうまくいくケースも少なくないはずだ。人間の直感や美意識、あるいは「これは面白い」「この本は読者に届く」という感覚は、データから導き出される最適解とは異なる価値を持つことがある。

もっとも、それが本当に正しいのかは、やってみないとわからない。AIが判断した企画の方が売れる、ということが実証される時代が来るかもしれない。そうなったとき、「人間の感覚の方が大事だ」という主張がどこまで通用するかは、正直わからない。


結び

タイトルの問いに戻ろう。デジタル関係の書籍編集者は、もういらないのか。

私の答えは、こうだ。「今と同じことをする編集者」はいらなくなる。

検索して、本を積み上げて構成案を練り、イラストレーターに発注して、原稿を一字一句チェックする——そういう働き方をする編集者の仕事は、確実に減っていく。すでに減っている。

しかし、AIという強力な道具を使いこなし、その出力に責任を持ち、読者に届く本を作れる編集者は、むしろこれから必要とされる。道具が変わっても、「良い本を作る」という目的は変わらない。変わるのは、そこに至るプロセスだ。

問題は、そのプロセスの変化があまりにも速いことだ。25年のキャリアで培ったスキルの多くが、この2年で陳腐化した。これからの2年で、さらに多くのことが変わるだろう。その変化についていけるかどうかは、年齢やキャリアの長さとは関係ない。新しい道具を試し、失敗し、また試す。その繰り返しを愚直にやれるかどうかだけだ。

編集者はいらなくなるのではない。「変わらない編集者」がいらなくなるのだ。

自分がその「変わらない」側に入らない保証は、どこにもない。だから、こうして書いている。

金曜日, 8月 13, 2021

電子書籍から紙の本に回帰しつつある件


電子書籍のデメリットの一つは、古い名著が忘れ去られることだ。いや、紙の本でも同じことではある。

売れ行きが悪ければ、出版社在庫切れ(いわゆる品切れ)となっても増刷されずにそのままとなるのが大半だ。在庫があるのに、断裁処分となって絶版の憂き目に会う本もある。稀に運の良い本は復刊ということで、出版から数十年後に増刷されることがある。しかし、今は紙の本の売れ行きが落ちているから、その望みも少ない。

電子書籍なら売れなくても在庫にならないから、どんどんラインナップを増やしていける。それがロングテール理論で、電子書籍はその好例の一つだったはずだ。しかし、実際はなかなかそうはいかず、林達夫のように、名著だったが読者がすでに減ってしまった著者の本はほとんど電子書籍化されていない。Kindleで読める林達夫の本は、彼の著作ではなく、ベルクソンの翻訳だけだ。

価格は電子書籍の方が若干安い場合が多く、スペースの問題を解決してくれる。しかし、物理的なスペースを占めない電子書籍は、存在そのものを忘れてしまうことがあり、本棚に並べた、あるいは床に積んだ書籍よりも取り出しやすさ、人間の脳に対する反応の面で明らかに劣っている。

ということで、困ったことにコミック以外は紙の本に回帰しつつある。1ヶ月で20cmから30cmの本の山を築いてしまう現状はなんとかしないと。




木曜日, 11月 26, 2020

実用書に「ちから」を持たせるための唯一の方法

20190216 writing

「なりたい」という気持ちと「やりたい」という気持ちはまるで別物。そこをわかってないと、養分にされるだけ。

ここまで読んで来た人ならば、いかにこれらの夢を売るセミナーが滑稽な事かわかるだろう。「なりたい」を肴にして、いくら他人に技術を教えようが「やりたい」だけは絶対に他人に習得させる事はできない。これは純然たる事実だ。

実用書の界隈に長く住んでいると、技術的なことをそつなく解説すれば、「とりあえずこれでいいか」というものは呻吟しなくても作れるようになってくる。しかし、他人の原稿を読んでいて頻繁に思うのは、「熱量」の不足である。「こうすれば、できるよ」という技術の部分は、いくらでもパクれる。そもそもそんなに難しいことはやっていないし、特殊なアイテムを使っているわけでもない。

ただ、「どうしてもこうしたい。なぜなら、この問題を解決したいから」といった「熱量」をパクることはなかなか難しい。「熱量」の高い原稿とそうでない原稿は、目標に向かって一直線に進むことを宿命付けられている実用書のジャンルでも、大きな違いが出てくる。そして、その「熱量」は他人が与えることはできず、自分で得るしかないのだ。

あなたは尾田栄一郎になりたいですか

もうひとつ、関連してよく考えるべきなのは、「ワンピース」作者の尾田栄一郎のくだりだ。「あなたは、尾田栄一郎になりたいですか」という問いは、大変重い。使い切れないようなお金を稼いだ上で、1日21時間労働を毎日続けたいのであれば、尾田栄一郎を目指すといいだろう。もし、イケハヤになりたいのであれば、イケハヤの働き方や考え方を真似ればいい。尾田栄一郎は無理でも、イケハヤの劣化コピーにはなれるかもしれない。

このとき、尾田栄一郎やイケハヤの得たものだけ見てはいけない。使い切れないような資産や楽をして(?)田舎暮らしという得たものだけではなく、毎日午前2時に寝て午前5時に起きる労働環境や、炎上商法で煽ったり売上を利益に見せかけたりするやり方も含めて、真似をしたいのかをよく考えるべきだろう。

1日21時間労働が嫌なら、あなたは尾田栄一郎にはなれない(別の方法で尾田栄一郎のように稼ぐことはできるかもしれない)。情弱を釣りまくって、ネットのあちこちで悪口を言われるような問題手法を実行し続けられないなら、あなたはイケハヤにはなれない。

投資で稼ぐためにいちばん重要なこと

また、cis氏の話も紹介されているが、ここからわかることは「投資で稼ぐには、投資で稼ぐことが好きでなければならない」ということだ。何を決まりきったことをと思うかもしれないが、投資はあまり好きではないが、仕方なく投資を行っている人が世の中には非常に多い。

職業投資家以外の投資家は、投資で稼いで大金を使いたい、または大金を貯めたいと考えている。つまり、投資の目的は消費や蓄財なのである。これでは、途中で挫折してしまう。本当に大金を得たいのであれば、投資で稼ぐことを第一目標にすべきだ。「大金を得たいから、投資をする」のではなく、「投資で稼ぎたいから、投資をする」と考えて、得られたお金の金額には頓着しないようにならないと、本当に投資でうまく稼ぎ続けることは難しいだろう。

投資を始める、ほぼすべての人は「お金を増やしたい」という欲望が最初にあるので、だいたい欲に目がくらんで失敗する。「投資という行為を極めたい」と考えれば、失敗しないだろう(成功するとは言ってないので注意)。


月曜日, 4月 06, 2020

Kindleを本の墓場にしないための方法



背表紙の見える本棚は偉大である。書名や著者名を見る者にリマインドしてくれる。ただ、物理的な制約は大きな問題である。本は重くかさばるので、たくさん買う人間にとっては、置き場所は貯金の金額より重大だ。

そのためもあって、電子書籍で済ませる人が増えてきつつあるが、実は見逃せない問題がある。Kindleで電子書籍を買っていると、どの本を買ったのか、全くわからなくなってしまうのだ。紙の本のように物理的なスペースを占めないので、本棚の前に立ってその本の存在を思い出す、というようなきっかけがないのである。

連載中のコミックだと、最新刊を読んでから続刊が出るまで数ヶ月、下手をすると1年以上経ってしまうことがあるが、その間にその本のことを忘れてしまうことがある。Amazonにアクセスすれば、新刊が出た時にリコメンドされることはあるが、完全ではない。著者のページをフォローしておけば、気づく確率は上がるが、これも必ず気づくとは限らない。多くの著者をフォローすれば、どうしても漏れが出てくる。

専用端末のKindleは画面が小さく、動作も遅いので、購入済みのKindle本を一覧するのには向かない。アカウントページから「コンテンツと端末の管理」→「コンテンツ」画面で確認するのがいいが、書名が文字で書いてあるだけなので、いまひとつだ。

で、気づいたのがKindle Cloud Reader。ブラウザで購入済みの本の表紙を一覧表示できる。これは大変便利だ。「黒沢」や「インベスターZ」など、ある程度買い揃えていたことを完全に忘れていた本のことをこの画面で思い出せた。

ただ、もう読むことのない本をこの画面で非表示にすることはできないし、この画面からKindle Unlimitedの本の利用を終了するなどの操作も不可能だ。コレクションもこの画面には反映されない。あまりメンテナンスされていないのかもしれない。そこは大変残念だが、一覧表示のスクロールは非常に高速なので、それなりに使える。

これを見て存在を思い出した本は、「これから読む本」などというコレクションを作成して登録し、Kindleで引っ張り出せばいいだろう。

ちなみに、Cloud Readerのヘルプには、コミックしか読めないと書いてあるが、これは間違いだ。

Kindle Cloud Readerについて

Kindle Cloud Readerを使用すると、ウェブブラウザでKindle本を読むことができます。Kindle端末やKindle無料アプリをお持ちでない場合は、Kindle Cloud Readerをご利用ください。 ...
注: Kindle Cloud Readerでは、マンガのみを読むことができます。その他のKindle本を読むには、Kindle無料アプリをダウンロードするか、Kindle端末をご利用ください。




木曜日, 3月 12, 2020

鈴木祐『ヤバい集中力』にヤバい誤りがある!?

ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45
鈴木 祐
SBクリエイティブ
売り上げランキング: 1,556

鈴木祐氏は、メンタリストDaiGoのブレーンとして有名な人である。昨年の論文誤読問題でちょっと株が下がった感があるが、有能なサイエンスライターであることに間違いはない。

鈴木祐氏は単著もあるのだが、先日購入した『ヤバい集中力』(鈴木祐著、SBクリエイティブ刊)をとてもためになるなあと思いつつ、パラパラめくっていて、ふと以下の点が目に止まった。体を動かすことが脳に対する休憩になるということで、「アクティブレスト」について解説したくだりだ。
たとえば学生を対象にした実験では、最大心拍数の約30%という負荷で10分の運動を行っただけでも被験者の脳機能が改善し、認知テストの結果では集中力と記憶力に有意な向上が見られています。(P237、初版第2刷)
参照元として挙げられているのは「Rapid stimulation of human dentate gyrus function with acute mild exercise」という論文だ。有名な論文らしく、タイトルで検索するとAbstractが読める

ここを読んでまず「?」と思ったのは、「最大心拍数の約30%という負荷」の部分だ。ワシはバリバリの中年オヤジなので、普段は60〜80くらい、先日熱を出して120に心拍が上がると不安になってくる。たとえば、階段を駆け上がって150になったら、結構死にそうな感じになりそうだ。最大心拍数が150として約30%だと45しかない。45を普段の心拍に足すのだろうか。そこの計算がよくわからない。で、元の文献をちょっと探してみることにした。

この本の末尾には、参考文献がたくさん挙げてあって、著者が多くの文献を参考にしてこの本を書いたのだろうと思えた。それはいいのだけど、なぜか文献ページの紙が濃いグレーで、文字がやや読みづらい。文献ページが色付きになっている本は、学術書ではあまりないと思う。ここも「?」と感じた点。

さらに、文献ページのスペースの使い方があり得ないほどバラついている。寝ていないとダメな数字が立っている箇所が1つあるのはご愛敬としても、スペースのバラつきは編集者が見落とすのは考えにくい。もしかすると、編集者はここを読んでいないのかもしれない。まあ、読者もほとんど読まないページなのは確かだが。

閑話休題。本題の「最大心拍数の約30%」だが、該当部分をAbstractを引用しておこう。
A single 10-min bout of very light-intensity exercise (30%V˙O2peak) results in rapid enhancement in pattern separation and an increase in functional connectivity between hippocampal DG/CA3 and cortical regions (i.e., parahippocampal, angular, and fusiform gyri).
問題の「V˙O2peak」(正しくは、Vの上にピリオドが来る)だが、日本語訳は「最高酸素摂取量」になるらしい。解説をちょっと調べた限りでは、心拍数と何の関係もないとは言えず、多少は関係あるようだが、「V˙O2peak」は少なくとも心拍数の単位ではない。「最大心拍数の約30%の負荷」ではなく、「最高酸素摂取量の30%程度しか酸素を取り込まないでいい程度の負荷」という意味になりそうだ。

医学・生理学はまったく素人なので、正しい解釈をしているかどうかは正直わからないが、鈴木祐氏の解釈は不正確である可能性が高いと思った。


水曜日, 8月 15, 2018

Kindle Oasisのバッテリー付きカバーはとっくに廃番

Kindle oasis Kindle・Fire用アクセサリ 通販 | Amazon
https://goo.gl/a9dD5w

Kindle Oasisを充電しようとして、「そういやバッテリー付きのカバーがあったな。あれ、今いくらだろ」と思って調べてみたら、ヒットしない。???と思って検索したら、Oasis第2世代からは仕様が変わって、カバーからの充電ができなくなっていた。しかも、自分の持っているのは第2世代だった。_| ̄|○

木曜日, 7月 19, 2018

読んだ本をどうするか

Bookshelf

「物理的な本を置いとかなくても、そこから得たモノはすべて自分の身になってる」という自信があるからです。

モノが捨てられないのは心の問題 - Chikirinの日記
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20180705

一時期は、(物理的な)紙の本よりも電子書籍(電書)の方がいいんじゃないかと思って、電書があれば電書を必ず買うようになっていたが、最近はジャンルによっては紙の本を買うことも多い。コミックは全部電書だけど。紙の本には、どうしても電書にはないアピール感があって、手触りとともに記憶に残る部分がある。雑誌はタブレットに全部移行してもそれほど困らないが、書籍はありえない。

それはともかく、紙の本はなくても、得たものは全部自分の身になっていると言い切れるのはすごい。ワシなんか、全然身についていない。読んだ後、読みっぱなしだからだろうね。読んだ本について考えたことを全部何かに書いておけば、すごく身につくと思う。大昔はそれに近いことをしていたから、多少は身についたのだろうが、最近15年くらいはどうにもならない。早く、読んだ本について何か書けるような、そんな生活に戻りたいものだ。

月曜日, 7月 16, 2018

作品はいらないから、商品を作ってくれ

コスプレ

『濃い作品はいいから、商品をいっぱい作ってくれ。作品はいらないから、商品を作ってくれ』と言われたこともある。ふざけんな! と思うんだけど、割と今そうなっている

https://www.oricon.co.jp/news/2113125/full/

ラノベにしたって、アニメにしたって、漫画だってそうだけど、作家性の重要なものはきっと作品と商品の間で揺れ動くところが難しいんだろうと思う。ただ、それは実用書でも実は同じじゃないかと思う。どこで一本筋を通すか。書籍でもムックでも同じ。雑誌の特集にも共通するのではないかなあ。まあ、さすがにWeb記事はそこまでではないかもしれないが。

“作品と商品”の違いについて「物を作っている中で、僕らは子どもや若い人に向けて、アニメを観ている時だけは自分がこうなったらいいみたいな、夢のキャラクターを作るのがこの仕事だと言っていた。ただし、ひとつだけ哲学を入れろと。つまり、これが(哲学が)ないとただの商品」と力を込める。

「哲学」がないと、単なる商品でしかない。しかも、それはそんなに売れないだろう。「哲学」を込めたところで売れるとは限らないが、「哲学」なしでは他の条件が良くても5割も売れない。そんな時代になってきたと感じる。

水曜日, 6月 13, 2018

収入をKDPに頼るとき、唯一不安を感じることは

ITmediaITmediaより

Kindle Unlimitedは読まれたページ数に応じて収益が分配される方式で

YouTuberの職業としてのもっとも問題だと思うのは、YouTubeの胸先三寸で収入も将来も決まってしまうことだ。ルールはYouTubeが決めて、YouTuberはそれをひっくり返すことはできない。電子書籍は、さすがにプラットホームはAmazonだけではないにしても、収益力(儲かるかどうか)はやはりAmazonかダントツだろう。その中でも、うまく利用すれば稼げるのがKDPだとのこと。コミックは、制作には時間がかかるが、読むスピードは圧倒的に文字中心の本より速いので、Kindle Unlimited向けだろう。現状の分配率なら、漫画家はどんどんKDPに作品を出して、売れるかどうかを試してみる価値がある。

ただ、いつまで現状が続くのかについては、個人的には若干懐疑的だ。というのは、AmazonがKindle Unlimitedの収益をコミックに重点的に配分している現状を「よろしくない」と判断すれば、例えば文字中心の作品ももっと充実させたいと考えれば、あまり売れないコミックへの配分は切り下げて、報酬を1桁安くし、原資の分配比率を変更するなどの方法を採るかもしれない。そのとき、「じゃあ、別の電子書店に出します」と言えないのが、KDP、特にKindle Unlimitedへの依存の怖さだろう。なぜなら、別の電子書店はKindle Unlimitedの類似サービス(月額サブスクリプションの読み放題サービス)を提供していないからだ。そして、KDPでKindle Unlimitedに出そうかと考えている漫画家は、すでにAmazon以外の電子書店には作品を単体販売で提供済みだろうから、純粋にKindle Unlimitedからの収入が減ってしまうことになる。

だからと言って、後戻りはできない……というのが、出版業界の現状だろう。じっと耐えて餓死するのを待つのか、あちこち歩き回った上で野垂れ死にするのか、どっちを選ぶのかはそれぞれの判断次第。個人的には、マスにリーチする本の数は、もっと少なくなるのが(残念ながら)正しい方向だと思う。そして、業界全体がサイズダウンしていくのが、ありそうな方向性だろう。ただし、それは「紙に印刷して書店に本を並べる」という従来の書籍・雑誌にのみ言えることであり、コンテンツそのものは今後もずっと需要が続く。ネットに繋ぐユーザー全員がゲームばかりしているわけではなく、またYahoo!ニュースしか見ないわけでもない。我々制作側に立つ人間ができることは、まだある。まだ読者に届けるべき情報はある。そう信じて、作り続けたい。

(追記)
たくさん売れないと、誰もコンテンツを作り続けられない。そんな状況はむしろ終わるべきで、もちろん流行作家がいてもいいし、バカ売れする本があったらそれでいいけど、そうじゃない人も生きていける業界に変わっていくべきだと思う。

月曜日, 4月 02, 2018

物書堂の辞書が安い!


物書堂 新学期・新生活応援セール実施中!

何割か安くなっているので、思わず10数冊まとめてお買い上げ。小学館大独和もうっかり買ってしまった。いくら使ったのかな…。ちなみに、大辞林とか大辞泉、漢辞海、漢字典は前から持ってた。



木曜日, 3月 15, 2018

電子ペーパーも600ppiの世界になる?



ニュース&イベント : ニュースリリース | 株式会社ジャパンディスプレイ

電子ペーパー向けバックプレーンに、当社が液晶で培ったLTPSバックプレーン技術を用いることで、高精細画像の駆動に必要な回路を形成し、スマートフォンのハイエンドモデル同等の高精細400ppiを実現したことに加え、広告ポスターの画質相当の高精細600ppiについても開発に成功しました。

手元で見るのに600ppiはオーバースペックだと思うが、用途が広がることはいいことだろう。カラー化と一般のタブレットへの採用が進めばいいが、たぶんダメだろうなあ。

日曜日, 4月 09, 2017

電子書籍サービスをどう止めるか

> 利用者が伸びずに撤退したサービスは少なくないが、「パンドラの箱が開くのはこれから。今後は大手の撤退もありえる」と桑野弁護士は予想する。

消費者保護の観点から、PDFはいいとして、専用ソフトを使用する電子書籍サービスはまず認可制にすべき。また、撤退時にDRMを解除して他の電子書籍端末でも読めるようにすべき…という意見が通るわけはないから、標準的なフォーマット(epubってDRMがかかる?不勉強だな…)に変換するツールを提供、購入した書籍が少なくともパソコンやスマホでは読めるようにする。専用端末はもう仕方ない。

あなたの電子書籍が読めなくなる日 | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online
http://president.jp/articles/-/21703

火曜日, 1月 31, 2017

万年筆本はどうあるべきか

Kenichi Moritani Mon, 30 Jan 2017 18:46:27 GMT - Google+ - Public
> 店頭で色々なペン先を試し書きをさせてもらっていると、やはり、 MやBは書いていても気持ちがいい。たっぷりとインクが出て紙の上をペン先かことの他スムーズに進んでいく。

たぶん、そうだろうなあ。それにしても、万年筆のムックはカタログが多くて、実用記事が少ないのが気になる。趣味性が高いからだろうか。まあ、パソコンやスマホとは比べものにならないが。

美しい細字を書きたい」. パイロット. カスタム743 フォルカン. パイロット カスタム743 フォルカン. ■ 3万円以上の万年筆を買う時、なぜか中字や太字を選んでいる 自分の持っている万年筆を改めて見てみると、明らかに一つの傾向があることに気づいた。それは、ペン先がM(中字)やB(太字)ばかりだということ。ただ、MやBが ...


from Google+ List of Activities for Collection PUBLIC http://ift.tt/2kMHSIP
via IFTTT

木曜日, 1月 26, 2017

ビジネス書を読んだあと、本当に変わるには

Kenichi Moritani Wed, 25 Jan 2017 17:03:54 GMT - Google+ - Public
> 大切なことは、プロフェッショナルが書いた本や雑誌記事、ウェブジャーナルやメールマガジンを読んだとき、「いま、自分は、日々の仕事の中で、このプロフェッショナルの、この智恵を掴もう」という課題意識を明確に持つことである。

ビジネス書をたくさん読んでも、必ずしも仕事が出来るようにはならない。結局のところ、いくらいいことを聞いても、実践できなければ何の意味もないわけだ。実践するためにはどうするか。自分のシーンに引き寄せて読む、考える。ひとつでもすぐに実践する。


ここまで3回の連載では、「仕事の技法」の根幹にある「深層対話の技法」や「深層対話力」の大切さとその実践方法について述べてきた。今回は、深層対話の技法を身につけるための、この連載の「実践的な読み方」について語ろう。


from Google+ List of Activities for Collection PUBLIC http://ift.tt/2jq6xVv
via IFTTT

水曜日, 1月 25, 2017

「ど根性ガエルの娘」がやばい

Kenichi Moritani Wed, 25 Jan 2017 13:11:35 GMT - Google+ - Public
こらあかん。(いろんな意味で)

ど根性ガエルの娘 第15話
http://ift.tt/24Xcjfd




from Google+ List of Activities for Collection PUBLIC http://ift.tt/2jeh8Q9
via IFTTT

木曜日, 10月 01, 2009

Appleが出版業界を救う


いよいよ米アップルのタブレット型Macの情報が漏れ出てきた。中身はどうやらiPhone OSみたいだ。出版社と交渉しているようなので、iTunes Storeで本のデータを販売するというスタイルになりそうな雰囲気だ。

国内では、取次を巻き込まないと、間違いなく取次が強く抵抗して、出版業界全体が沈んでしまう。ただ、取次をうまく巻き込めれば、何とかなるかもしれないが、ジョブズの考えるビジネスとは違うだろう。英語圏が先行され、日本などは何年も後回しにされる可能性が高い。面倒な話だ。

火曜日, 6月 16, 2009

「白痴」のアグラーヤはツンデレ



ドストエフスキーの「白痴」を読んでいるのだが、アグラーヤがいかにもツンデレっぽい。ちょっとググってみたら、いろんな人が書いていてワロた。ナスターシャもツンデレだということだが、デレが今ひとつ魅力的でない。引用は新潮文庫の上巻、末尾あたり。

アグラーヤからレフ・ニコラエヴィチ公爵への手紙をリザヴェータ夫人が読み上げさせる。
「レフ・ニコラエヴィチ公爵! あのようなことがあった後で、もしあなたがあたくしどもの別荘を訪ねて、あたくしをびっくりさせようとお考えでしたら、どうぞご心配なく。あたくしは、あなたを大喜びする仲間に入りませんから。
アグラーヤ・エパンチナ」
振られたと思った公爵。そこに、リザヴェータ夫人が追い打ちをかける。
「あの娘にはあなたのような道化役者が要るんですよ、長いこと会わなかったものだから、それであなたを呼んでいるんですよ! あの娘がこれからあなたをとっちめるのが、私もうれしいんですよ、うれしいんですよ! あなたなんかそれがお似合いなのよ。それに、あの娘はそれくらいできますからね。ええ、できますとも!」
ついていけない(笑)

AI時代の本の読み方