電子書籍のデメリットの一つは、古い名著が忘れ去られることだ。いや、紙の本でも同じことではある。
売れ行きが悪ければ、出版社在庫切れ(いわゆる品切れ)となっても増刷されずにそのままとなるのが大半だ。在庫があるのに、断裁処分となって絶版の憂き目に会う本もある。稀に運の良い本は復刊ということで、出版から数十年後に増刷されることがある。しかし、今は紙の本の売れ行きが落ちているから、その望みも少ない。
電子書籍なら売れなくても在庫にならないから、どんどんラインナップを増やしていける。それがロングテール理論で、電子書籍はその好例の一つだったはずだ。しかし、実際はなかなかそうはいかず、林達夫のように、名著だったが読者がすでに減ってしまった著者の本はほとんど電子書籍化されていない。Kindleで読める林達夫の本は、彼の著作ではなく、ベルクソンの翻訳だけだ。
価格は電子書籍の方が若干安い場合が多く、スペースの問題を解決してくれる。しかし、物理的なスペースを占めない電子書籍は、存在そのものを忘れてしまうことがあり、本棚に並べた、あるいは床に積んだ書籍よりも取り出しやすさ、人間の脳に対する反応の面で明らかに劣っている。
ということで、困ったことにコミック以外は紙の本に回帰しつつある。1ヶ月で20cmから30cmの本の山を築いてしまう現状はなんとかしないと。
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